
「需要が生産を規定する」という有効需要の原理は、国民経済レベルのGDPそのものを分析対象とし、それがどのように決まるか考察する時の基本的原理を示しています。
ここで、GDPは原材料等の中間財投入の部分を国内生産額から引いたものを集計したものであり、中間財投入の存在を捨象していることになります。しかし、中間財がどのように投入されるかはGDPに大きな影響を与えます。したがって、一国経済の活動の様子をきちんと把握するためには、投入される中間財の取引実態をとらえておく必要があります。
中間財の取引は、企業と企業との間で行われます。ここで問題になるのは、企業は無数にあり、それらひとつひとつの経済活動を把握することはできません。無数にある企業を何らかの形で統合していく必要があり、そのためには「産業」という概念が大切になります。産業とは、類似した財・サービスを生産供給している企業を統合化したものです。尚、類似性をどの程度のレベルでとらえるかによって、様々なレベルの産業分類があることに留意して下さい。中間財の取引を産業間での取引と見なすと、産業と産業の連関関係がどのようなものであるかを把握することが重要になります。
産業間の中間財の取引は、各産業からみると、自らが生産している財・サービスに対して他産業から注文という形で需要が発生することを意味します。このように産業間の中間財の取引によって各産業で生まれる需要を中間需要といいます。
経済活動をになう単位を「経済主体」と呼びますが、主な経済主体は、家計、企業、政府、海外の4つになります。このうち家計は消費支出と住宅投資、企業は設備投資、政府は消費支出と公共投資、海外は輸出超過(=輸出−輸入)を通じて需要を生み出します。各経済主体の消費行動、投資行動、輸出・輸入行動で創出される需要を最終需要と呼びます。各経済主体の行動による最終需要が決まると、各産業へ受注という形で需要が発生し、これが産業別の最終需要を形成します。
産業別の中間需要と最終需要を合計したものが産業別の総需要になります。産業別の総需要が決まると、有効需要の原理によってそれに等しく産業別の生産額が決まります。
各産業の中間財取引は、生産のためには中間財の投入が必要不可欠であるというところから始まるのはいうまでもありません。産業別に生み出されるGDP(付加価値)は、産業別生産額から産業別中間財投入額を引いてもとまることになります。そのうえで、産業別GDPを集計して国民経済レベルのGDPが決まります。
このような一連の産業別経済行動を数値データとして表にまとめたものが産業連関表です。産業連関表をもとに、投資やイベントの新規プロジェクトの経済波及効果や将来の産業・経済予測など様々な経済分析が行われていますが、これを総称して産業連関分析といいます。産業連関分析とは、有効需要の原理を産業別に応用した分析手法であるという特徴をもっています。